今回は結核について。3月24日は世界結核デーです。細菌学者ロベルト・コッホが1882年に結核菌の発見を発表した日にちなみ、1997年の世界保健総会で制定されたそうです。ちなみに、厚生労働省においては、毎年9月24日から30日までを「結核予防週間」として、結核予防に関する普及啓発などを行っています。 ●結核ってどんな病気? 結核菌(Mycobacterium tuberculosis )が体の中に入ることによって起こる病気です。今でも毎年新たに1万5000人以上の患者が発生し、約2千人が死亡しています。欧米の先進国は結核罹患率が人口10万対10以下の低まん延国になっているのに対して、日本はH30年現在、中まん延国となっています。●結核はどのような症状がでるの?感染経路はほとんど空気感染で、主に肺の内部で増えるために咳、痰、発熱、呼吸困難等、風邪に似た症状を呈します。痰が出る、長引く咳。身体がだるい、食欲がない。元気がない。微熱が続く。急に体重が減る。などの症状がある場合にはもしかして結核かも?と疑いましょう。特に2週間以上続く咳、たん、発熱は要注意です!かぜの症状に似ているため、症状が出始めてからも結核になったことに気付かず、結核の発見が遅れることもあります。咳が2週間以上続くときは、必ず医療機関を受診しましょう。また、肺以外の臓器が冒されることもあり、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響を及ぼすことがあります。結核菌に感染した場合、必ずしもすぐに発症(発病)するわけではなく、感染しても発病する人は10人中1人か2人程度です。通常は免疫力が勝ち結核菌の増殖が抑えられ(静菌化)、冬眠状態(dormacy)となりますが、免疫力が弱まると再び増殖し発症することもあります。★「感染」と「発病」の違いについて・「感染」とは吸い込んだ結核菌が肺に定着した状態をいいます。結核菌が体内にあっても、特に悪い影響を与えていない状態で、人への感染性もありません。・「発病」とは結核菌が体内で増えて病気を引き起こした状態をいいます。発病の初期は、咳や痰の中に結核菌が出ませんが、結核の進行に伴い、咳や痰の中に結核菌が排菌され、排菌量が増えると他の人にも感染させるようになります。●結核はどうやって診断するの?・感染しているかどうか診断する方法:ツベルクリン反応検査、IGRA検査(インターフェロン-γ測定試験/血液検査)・発病しているかどうか診断する方法:胸部エックス線検査、痰などを採取して結核菌を検出する方法(塗沫検査法、分離培養法、PCR法)があります。●結核の治療は?もし発病してしまったら、通常は結核の薬を数種類、概ね6か月から9か月服薬します。標準的な化学療法では、最初の2カ月はイソニアジド(INH)+リファンピシン(RFP)、ピラジナミド(PZA)、ストレプトマイシン(SM)またはエタンブトール(EB)の4剤で治療し、その後の4カ月間はINH +RFP の2剤、またはINH +RFP +EBの3剤で治療します。結核菌が消えれば、周囲へうつすこともなく、治療が終わります。その後は、2年程度再発の有無を経過観察します。 ★足立区の結核状況は?(2019年足立区結核統計)新登録結核患者数107人罹患率(人口10万人日する結核患者の数)15.7%新登録結核患者に占める喀痰塗抹陽性肺結核患者割合(結核菌を排出し、人にうつす可能性がある状態)38.3%新登録結核患者に占める高齢者(70歳以上)割合54.2%参照:東京都感染症情報センター 東京都における結核の概況http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/Tb/year_tb/2019/tb_y2019_fuhyo.pdf ●結核罹患率の推移(平成20年から平成30年)東京都、足立区ともに全国より高くなっています。出典:足立区ホームページより抜粋https://www.city.adachi.tokyo.jp/kansensho/fukushi-kenko/kenko/2016kekkaku.html●年齢階級別罹患率(平成30年)足立区は15歳から39歳、50歳から69歳、80歳から89歳のり患率が全国より高くなっています。出典:足立区ホームページより抜粋 https://www.city.adachi.tokyo.jp/kansensho/fukushi-kenko/kenko/2016kekkaku.html 【高齢者は特に注意!】70歳以上の結核発病者は54.2%でした。高齢者はせき・たんなどの典型的な症状が出にくい場合が多く、受診が遅れ重症化する傾向があります。食欲不振や体重減少、微熱、なんとなく元気がない状態が続いている高齢者には、受診を勧めてください。【若者の結核が増えています!】新登録結核患者に占める若年者割合16.8%若年層の方は一般的に活動範囲が広く、感染源が特定できないことがほとんどで、行動範囲が広いため感染が拡大する傾向にあります。感染しても発病しないためには規則正しい生活と、食事、睡眠などで免疫力をつけることが大事です。【糖尿病が悪化すると結核発病リスクが高まります!】糖尿病になると細胞性免疫が低下し、結核を発病しやすくなります。糖尿病を悪化させないことが重要です。足立区では結核患者の5人に一人が糖尿病を合併しています。足立区で新たに結核と診断された方の合併症は、糖尿病が最も多くなっています。平成30年は約7.3人に1人が糖尿病を合併していました。●予防のポイント予防のポイントは、予防接種、咳エチケット、定期健診の3つです。・予防接種を受けましょう乳幼児が感染した場合の重症化予防(結核性髄膜炎、粟粒結核 等の予防)を目的に、BCGの予防接種を行います。BCGは2014年4月1日以降、生後1歳に至るまでの間に接種することと変更されました。BCGを接種することで、結核の「感染」を防ぐことはできません。・咳エチケットを心がけましょう咳やくしゃみをする時はティッシュやマスクを口と鼻にあて、他の人に直接飛沫がかからないようにしましょう東京都感染症情報センター 咳エチケットhttp://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/cover-cough/・定期健診を受けましょう年に1度の健康診断(胸部X線撮影)や学校・職場健診、特定健診・後期高齢者医療健診等を利用して結核の早期発見に努めましょう。結核は、今でも国内最大の慢性感染症であり、早期発見・早期治療が重要な病気です。日頃から規則正しい生活と休養、バランスのとれた食事を心がけて、からだの抵抗力を落とさないことが大切です。 【参照】厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/bcg/https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000661460.pdf国立感染症研究所ホームページhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/398-tuberculosis-intro.html足立区ホームページhttps://www.city.adachi.tokyo.jp/kansensho/fukushi-kenko/kenko/2016kekkaku.html東京都感染症情報センター http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/Tb/year_tb/2019/tb_y2019_fuhyo.pdfhttp://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/tb/東京都福祉保健局ホームページhttps://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/kekkaku/公益財団法人結核予防会ホームページhttps://www.jatahq.org/ ==============================院長 飯田 修史足立外科胃腸内科医院【外科・胃腸内科・内科・皮膚科】【五反野、青井のクリニック】東京都足立区青井2−24−803−3880−1191かかりたい、かかってよかったといわれるクリニックを目指します。https://www.adachi-ichou.com/https://www.youtube.com/watch?v=WPFDp2tsugo==============================
3月24日は世界結核デーです。
細菌学者ロベルト・コッホが1882年に結核菌の発見を発表した日にちなみ、1997年の世界保健総会で制定されたそうです。
ちなみに、
厚生労働省においては、毎年9月24日から30日までを「結核予防週間」として、結核予防に関する普及啓発などを行っています。
結核菌(Mycobacterium tuberculosis )が体の中に入ることによって起こる病気です。
今でも毎年新たに1万5000人以上の患者が発生し、約2千人が死亡しています。
欧米の先進国は結核罹患率が人口10万対10以下の低まん延国になっているのに対して、日本はH30年現在、中まん延国となっています。
●結核はどのような症状がでるの?
感染経路はほとんど空気感染で、主に肺の内部で増えるために咳、痰、発熱、呼吸困難等、風邪に似た症状を呈します。
痰が出る、長引く咳。
身体がだるい、食欲がない。
元気がない。微熱が続く。
急に体重が減る。
などの症状がある場合にはもしかして結核かも?と疑いましょう。
特に2週間以上続く咳、たん、発熱は要注意です!
かぜの症状に似ているため、症状が出始めてからも結核になったことに気付かず、結核の発見が遅れることもあります。
また、肺以外の臓器が冒されることもあり、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響を及ぼすことがあります。
結核菌に感染した場合、必ずしもすぐに発症(発病)するわけではなく、感染しても発病する人は10人中1人か2人程度です。
通常は免疫力が勝ち結核菌の増殖が抑えられ(静菌化)、冬眠状態(dormacy)となりますが、免疫力が弱まると再び増殖し発症することもあります。
★「感染」と「発病」の違いについて
・「感染」とは吸い込んだ結核菌が肺に定着した状態をいいます。
・「発病」とは結核菌が体内で増えて病気を引き起こした状態をいいます。
●結核はどうやって診断するの?
・感染しているかどうか診断する方法:ツベルクリン反応検査、IGRA検査(インターフェロン-γ測定試験/血液検査)
・発病しているかどうか診断する方法:胸部エックス線検査、痰などを採取して結核菌を検出する方法(塗沫検査法、分離培養法、PCR法)があります。
●結核の治療は?
もし発病してしまったら、通常は結核の薬を数種類、概ね6か月から9か月服薬します。
標準的な化学療法では、最初の2カ月はイソニアジド(INH)+リファンピシン(RFP)、ピラジナミド(PZA)、ストレプトマイシン(SM)またはエタンブトール(EB)の4剤で治療し、その後の4カ月間はINH +RFP の2剤、またはINH +RFP +EBの3剤で治療します。
結核菌が消えれば、周囲へうつすこともなく、治療が終わります。その後は、2年程度再発の有無を経過観察します。
新登録結核患者数107人
罹患率(人口10万人日する結核患者の数)15.7%
新登録結核患者に占める喀痰塗抹陽性肺結核患者割合(結核菌を排出し、人にうつす可能性がある状態)38.3%
新登録結核患者に占める高齢者(70歳以上)割合54.2%
参照:東京都感染症情報センター 東京都における結核の概況
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/Tb/year_tb/2019/tb_y2019_fuhyo.pdf
70歳以上の結核発病者は54.2%でした。
高齢者はせき・たんなどの典型的な症状が出にくい場合が多く、受診が遅れ重症化する傾向があります。
食欲不振や体重減少、微熱、なんとなく元気がない状態が続いている高齢者には、受診を勧めてください。
【若者の結核が増えています!】
新登録結核患者に占める若年者割合16.8%
若年層の方は一般的に活動範囲が広く、感染源が特定できないことがほとんどで、行動範囲が広いため感染が拡大する傾向にあります。
感染しても発病しないためには規則正しい生活と、食事、睡眠などで免疫力をつけることが大事です。
【糖尿病が悪化すると結核発病リスクが高まります!】
糖尿病になると細胞性免疫が低下し、結核を発病しやすくなります。
糖尿病を悪化させないことが重要です。
足立区では結核患者の5人に一人が糖尿病を合併しています。
足立区で新たに結核と診断された方の合併症は、糖尿病が最も多くなっています。
平成30年は約7.3人に1人が糖尿病を合併していました。
●予防のポイント
予防のポイントは、予防接種、咳エチケット、定期健診の3つです。
・予防接種を受けましょう
乳幼児が感染した場合の重症化予防(結核性髄膜炎、粟粒結核 等の予防)を目的に、BCGの予防接種を行います。
・咳エチケットを心がけましょう
咳やくしゃみをする時はティッシュやマスクを口と鼻にあて、他の人に直接飛沫がかからないようにしましょう
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/cover-cough/
・定期健診を受けましょう
年に1度の健康診断(胸部X線撮影)や学校・職場健診、特定健診・後期高齢者医療健診等を利用して結核の早期発見に努めましょう。
結核は、今でも国内最大の慢性感染症であり、早期発見・早期治療が重要な病気です。
日頃から規則正しい生活と休養、バランスのとれた食事を心がけて、からだの抵抗力を落とさないことが大切です。
厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000661460.pdf
国立感染症研究所ホームページ
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/398-tuberculosis-intro.html
足立区ホームページ
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/Tb/year_tb/2019/tb_y2019_fuhyo.pdf
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/tb/
東京都福祉保健局ホームページ
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/kekkaku/
公益財団法人結核予防会ホームページ
https://www.jatahq.org/
院長 飯田 修史
足立外科胃腸内科医院
【外科・胃腸内科・内科・皮膚科】
【五反野、青井のクリニック】
東京都足立区青井2−24−8
03−3880−1191
かかりたい、かかってよかったといわれるクリニックを目指します。
https://www.adachi-ichou.com/
https://www.youtube.com/watch?v=WPFDp2tsugo
==============================