今回は未知の臓器が発見されたという論文について。今まで知られていなかった臓器が発見されたという記事を目にしたので、論文のabstract(抄録)を読んでみました。掲載された雑誌の名前:Radiotherapy and Oncology受理された日時:2020年9月16日タイトル:The tubarial salivary glands: A potential new organ at risk for radiotherapyネット上で無料で読むことができます。簡単にまとめると・オランダの研究チームが・前立腺癌の研究において・PSMA PET-CT(positron emission tomography/computedtomography with prostate-specific membrane antigen ligands)という画像診断方法をつかって・偶然に・鼻と喉が繋がる部分(鼻咽頭:asopharynx)に・これまで知られていなかった約4cmの一対の新しい臓器を発見した。・前立腺がんで治療中の患者100人の頭部と頸部のスキャン画像を調べ、男性1人と女性1人の遺体解剖を行った結果、全員がこの新しい臓器を対でもっていた。・新しい臓器は唾液腺の組織であった。・新しく発見された臓器を「Tubarial Glands(管状腺)」と名付けた。という論文でした。PET/CTとは、PET(positron emission tomography : 陽電子放出断層撮影)とCT(Computed Tomography)が一体化した装置で、2つの検査を同時に行い各々の画像を重ね合わせることにより正確な診断を行うことが出来るものです。PSMA (prostate-specific membrane antigen)とは前立腺特異的膜抗原のことで、前立腺癌細胞に非常に多くのPSMAが発現しています。前立腺だけでなく唾液腺や神経叢でも発現しています。PSMA PET-CTは患者に注入した放射性のトレーサーを前立腺がんに多く含まれるタンパク質のPSMAと結合させ検出するという画像診断法で、トレーサーと結合するPSMAは前立腺癌細胞だけではなく、唾液腺組織にも多く含まれているため唾液腺も検出されます。今回の論文ではこのように前立腺癌の研究でPSMA PET-CTを用いたところ偶然、「唾液腺」である「未知の臓器=管状腺」が発見されたということです。唾液線はおもに「舌の下」「下顎の後ろ」「頬の後ろ」の3カ所にあると思っていましたが、目に見えない唾液腺が喉や口の粘膜組織に1000個以上存在しているとのことでした。今までは「管状腺」の存在は知られていなかったため、癌の治療において損傷されていた可能性があります。管状腺は唾液を分泌するため、がんの放射線治療で管状腺が損傷すると口腔乾燥症や嚥下障害を伴う機能低下、食物摂取障害、消化不良、発話障害、虫歯や口腔感染症などのリスクが増加し、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を損ねてしまいます。今回管状腺の存在が認知されたことにより、今後損傷を回避することが可能となれば治療後のQOLを向上させることができます。それにしても唾液腺が1000個以上存在すること、そしてこの時代においてもまだ人体に未知の臓器があることに驚くとともに、学生時代に学んだ解剖学の教科書に出てくる臓器が全てであり、人体にこれ以上新しい臓器などないと思い込んでいた自分の頭の固さに愕然としました。超音波やCT、MRIといった検査ではこの臓器は見つけられず、PSMA PET-Cという最先端の機器を用いることにより見つけることができたことから、テクノロジーがこれからますます発展していけばさらなる人体における新しい発見がなされるのではとワクワクしています。 ==============================院長 飯田 修史足立外科胃腸内科医院【外科・胃腸内科・内科・皮膚科】【五反野、青井のクリニック】東京都足立区青井2−24−8 03−3880−1191 かかりたい、かかってよかったといわれるクリニックを目指します。https://www.adachi-ichou.com/https://www.youtube.com/watch?v=WPFDp2tsugo==============================
今まで知られていなかった臓器が発見されたという記事を目にしたので、論文のabstract(抄録)を読んでみました。
掲載された雑誌の名前:Radiotherapy and Oncology
受理された日時:2020年9月16日
タイトル:The tubarial salivary glands: A potential new organ at risk for radiotherapy
ネット上で無料で読むことができます。
簡単にまとめると
・オランダの研究チームが
・前立腺癌の研究において
・PSMA PET-CT(positron emission tomography/computedtomography with prostate-specific membrane antigen ligands)という画像診断方法をつかって
・偶然に
・鼻と喉が繋がる部分(鼻咽頭:asopharynx)に
・これまで知られていなかった約4cmの一対の新しい臓器を発見した。
・前立腺がんで治療中の患者100人の頭部と頸部のスキャン画像を調べ、男性1人と女性1人の遺体解剖を行った結果、全員がこの新しい臓器を対でもっていた。
・新しい臓器は唾液腺の組織であった。
・新しく発見された臓器を「Tubarial Glands(管状腺)」と名付けた。
という論文でした。
PET/CTとは、PET(positron emission tomography : 陽電子放出断層撮影)とCT(Computed Tomography)が一体化した装置で、2つの検査を同時に行い各々の画像を重ね合わせることにより正確な診断を行うことが出来るものです。
PSMA (prostate-specific membrane antigen)とは前立腺特異的膜抗原のことで、前立腺癌細胞に非常に多くのPSMAが発現しています。前立腺だけでなく唾液腺や神経叢でも発現しています。
PSMA PET-CTは患者に注入した放射性のトレーサーを前立腺がんに多く含まれるタンパク質のPSMAと結合させ検出するという画像診断法で、トレーサーと結合するPSMAは前立腺癌細胞だけではなく、唾液腺組織にも多く含まれているため唾液腺も検出されます。
今回の論文ではこのように前立腺癌の研究でPSMA PET-CTを用いたところ偶然、「唾液腺」である「未知の臓器=管状腺」が発見されたということです。
唾液線はおもに「舌の下」「下顎の後ろ」「頬の後ろ」の3カ所にあると思っていましたが、目に見えない唾液腺が喉や口の粘膜組織に1000個以上存在しているとのことでした。
今までは「管状腺」の存在は知られていなかったため、癌の治療において損傷されていた可能性があります。
管状腺は唾液を分泌するため、がんの放射線治療で管状腺が損傷すると口腔乾燥症や嚥下障害を伴う機能低下
、食物摂取障害、消化不良、発話障害、虫歯や口腔感染症などのリスクが増加し、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を損ねてしまいます。
今回管状腺の存在が認知されたことにより、今後損傷を回避することが可能となれば治療後のQOLを向上させることができます。
それにしても唾液腺が1000個以上存在すること、そしてこの時代においてもまだ人体に未知の臓器があることに驚くとともに、
学生時代に学んだ解剖学の教科書に出てくる臓器が全てであり、人体にこれ以上新しい臓器などないと思い込んでいた自分の頭の固さに愕然としました。
超音波やCT、MRIといった検査ではこの臓器は見つけられず、PSMA PET-Cという最先端の機器を用いることにより見つけることができたことから、テクノロジーがこれからますます発展していけばさらなる人体における新しい発見がなされるのではとワクワクしています。
院長 飯田 修史
足立外科胃腸内科医院
【外科・胃腸内科・内科・皮膚科】
【五反野、青井のクリニック】
東京都足立区青井2−24−8
03−3880−1191
かかりたい、かかってよかったといわれるクリニックを目指します。
https://www.adachi-ichou.com/
https://www.youtube.com/watch?v=WPFDp2tsugo
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