胃がん
胃がんってどんな病気?
胃がんは胃粘膜上皮から発生する悪性腫瘍であり、明らかな原因の1つに塩分摂取があります。一方、胃がんの予防に有効な食生活として、野菜、果物などを摂ることがすすめられています。胃癌の死亡率はわが国では男女とも低下傾向で、罹患率も低下しています。胃癌の発生要因としてはピロリ菌(Helicobacter pylori)感染が最も重要であり、除菌治療の普及や衛生状態の向上による保菌率の低下が胃癌罹患数の減少につながっていると考えられています。
胃壁は内側から粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、(固有)筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜の6層により構成されています。
内側の粘膜から発生した胃がんは胃壁の上下方向、水平方向にひろがっていきます。胃がんの浸潤が粘膜内または粘膜下層にとどまっているものを「早期胃がん」といい、固有筋層よりも深く浸潤しているものを「進行胃がん」といいます。
がんの特徴として臓器の外に病変が広がる「転移」があります。転移にはリンパの流れにのってリンパ節にたどりつき、そこで増殖する「リンパ節転移」、血液の流れにのって他の臓器へたどりつき、そこで増殖する「血行性転移」、がん細胞が臓器の壁を越え、おなかの中(腹腔)にちらばる「腹膜転移(播種)」などがあります。胃壁の下にどこまで癌が浸潤しているか(深達度)によりリンパ節転移率が異なることから、深達度はその後の治療法の選択に重要な要素となっています。
どういった症状があるの?
早期胃癌はほとんどが無症状で、検診などで偶然発見されることが多いです。進行すると体重減少、体のだるさ、食欲低下、貧血、腹痛、腹部不快感、嘔吐、吐血や黒色便などの出血症状が出現し胃がんそのものがしこりとなって、触れるケースもあります。進行がかなり進むと転移の症状もあらわれてきます。
どんな検査をすればいいの?
早期発見のために胃がん検診として推奨されている胃カメラ(上部消化管内視鏡)やバリウムによる胃透視(造影X線検査)をはじめ、進行胃癌の深達度診断や転移巣の検索には造影CT検査が最も有用です。CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーは再発診断の補助として用いられますが胃癌の早期発見には不向きです。
胃内視鏡検査では、胃粘膜の様子、色、形態の変化から、胃がんのほか炎症や潰瘍などを見つけることができます。病巣部を直接観察できることが大きな特徴で、主病巣の位置や大きさだけでなく、病巣の拡がりや表面の形状(隆起や陥凹、色調などから、病巣の数やある程度の深達度が判断できます。
内視鏡検査のもう一つの大きなメリットは、検査中に病変が見つかった場合、鉗子と言われる処置具を使って直接組織を採り、病理検査ができるため、病気の判定に役立っています。
どんな治療をするの?
胃壁のどこまで癌が進行しているのか?、リンパ節転移や血行性転移、腹膜播種はあるか?など、がんがどこまで広がっているのかを総合的に判断し臨床病期(Stage)を決定します。それにより選択できる治療法が異なってきます。治療の原則は内視鏡的または外科的な癌の切除となります。
がん細胞が胃粘膜内にある(cT1a)一部の胃癌に対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)などの内視鏡的切除が選択されます。
内視鏡的切除は胃の中にのみアプローチする局所治療で、胃の外にあるリンパ節や臓器にはアプローチできません。内視鏡的治療の適応とならない切除可能胃癌に対しては外科手術が選択されます。病変が胃のどの部分に位置するか、胃壁のどこまで癌が進行しているのか等を総合的に判断し手術術式を決定します。
胃の入り口部分の2/3を切除する「噴門側胃切除術」、胃の出口部分の2/3を切除する「幽門側胃切除術」、胃をすべて切除する「胃全摘術」などの手術術式があります。胃癌に対する腹腔鏡下手術は1991年に初めて報告されて以来急速に普及しており、現在のガイドラインにおいてもcStageⅠの症例に対して許容されています。
根治手術ができたとしても、顕微鏡の診断結果(病理組織学的検査)によってStage ⅡまたはⅢであった場合には術後1年間の抗癌剤(S-1)の内服(補助化学療法)が必要となってきます。また切除不能胃癌もしくは再発胃癌に対しては化学療法が行われます。